はじめに
近年、ITインフラの自動化が進んでいます。その中でも「Infrastructure as Code (IaC)」は、サーバーやネットワークなどのITインフラをコードを用いて構築・管理する方法として注目されています。この記事では、Google Cloud Platform (GCP) の「Cloud Deployment Manager」、Amazon Web Services (AWS) の「CloudFormation」、およびオープンソースの「Terraform」を中心に、インフラストラクチャの自動化について解説します。
Infrastructure as Code (IaC) とは
IaC は、インフラストラクチャ(サーバー、ネットワーク、ストレージなど)をコードで定義し、自動化する手法です。主な目的はインフラの構築、管理、更新を一貫性を持って効率的に行うことです。Terraform、Cloud Deployment Manager、CloudFormation などが代表的なツールです。
IaC における「インフラ」は何が含まれる?
IaC では、次のような要素が「インフラ」として扱われます。
- サーバー: 仮想マシンやコンテナなどのコンピュートリソース。
- ネットワーク: VPC、サブネット、ルーター、ロードバランサーなどのネットワーク構成要素。
- ストレージ: データベース、オブジェクトストレージ、ブロックストレージなどのデータストレージリソース。
- セキュリティ: ファイアウォールルール、IAMポリシー、セキュリティグループなどのセキュリティ設定。
- その他: DNS 設定、メッセージングサービス、監視設定など、アプリケーションの運用に必要な全てのリソース。
Cloud Deployment Manager, CloudFormation, Terraform の比較
項目 | |||
---|---|---|---|
特長 | GCP に最適化されたリソース管理 | AWS に最適化されたリソース管理 | マルチクラウド対応、一貫したインターフェース |
制約 | GCP のみ対応。 マルチクラウドやオンプレミス環境には対応していない。 機能が限定的。 | AWS のみ対応。 他クラウドプロバイダやオンプレミス環境には対応していない。 テンプレートの複雑さ。 | プロバイダごとに異なる設定が必要。 他のツールに比べて習得が難しい場合がある。 エンタープライズ向け機能は有料。 |
利用場面 | GCP のみを利用する場合、シンプルな構成の場合 | AWS のみを利用する場合 | マルチクラウド環境やオンプレミス環境を含む場合 |
利点 | GCP サービスとの統合が容易。GCP 環境に特化した簡単な利用。無料で使用可能。 | AWS サービスとの統合が容易。AWS 環境に特化した広範なリソースサポート。スタック管理による依存関係管理が可能。 | 一貫したツールで複数のプロバイダを管理 |
Cloud Deployment Manager
公式:https://cloud.google.com/deployment-manager/docs?hl=ja
Cloud Deployment Manager (CDM) は、GCP 上のインフラストラクチャをコードで定義し、デプロイするためのサービスです。テンプレートを使用して、GCP リソースを簡単に作成、管理、更新できます。
Cloud Deployment Manager の利点
- 迅速なデプロイ: GCP 環境での迅速なリソースデプロイを実現。
- 簡易性: 簡単に始められ、GCP 環境に最適化されています。
- 無料で利用可能: 追加コストなしで利用可能。
Cloud Deployment Manager の制限
- GCP 限定: マルチクラウドやオンプレミス環境には対応していません。
- 機能の限定: 他のツールに比べて提供される機能が限定的。
AWS CloudFormation
公式:https://aws.amazon.com/jp/cloudformation/
AWS CloudFormation は、AWS 上のインフラストラクチャをコードで定義し、デプロイするためのサービスです。テンプレートを使用して、AWS リソースを簡単に作成、管理、更新できます。
AWS CloudFormation の利点
- AWS に最適化: AWS 環境でのリソース管理が容易。
- 広範なリソースサポート: AWS のほぼすべてのリソースをサポート。
- スタック管理: 依存関係を考慮したリソース管理が可能。
AWS CloudFormation の制限
- AWS 限定: 他のクラウドプロバイダやオンプレミス環境には対応していません。
Terraform
Terraform は、オープンソースの IaC ツールで、複雑なインフラ構成をコードで管理し、自動化することができます。
Terraform を使うべき場合
- インフラ構成が複雑: 複雑なインフラストラクチャをコードで管理できます。
- 頻繁に更新する: インフラストラクチャの頻繁な変更を容易に管理できます。
- チームで共有して管理: 複数のチームメンバーとインフラストラクチャの管理を共有できます。
- インフラコストの削減: 効率的なリソース管理によるコスト削減が可能です。
Terraform のメリット
- 宣言型アプローチ: デプロイするリソースを定義するだけで、細かい手順を指定する必要がありません。
- マルチクラウド対応: GCP や AWS だけでなく、Azure や Oracle Cloud など、さまざまなクラウドプロバイダに対応しています。
- 再利用性: 一度定義した構成を他のプロジェクトでも再利用できます。
Terraform を GCP や AWS で利用する(イメージ)
GCP で Terraform を利用する
プロバイダの設定: Terraform 構成ファイル(通常は main.tf
)で Google プロバイダを指定
provider "google" {
project = "my-gcp-project-id"
region = "us-central1"
}
リソースの定義: GCP 上のリソースを Terraform を使って定義
resource "google_compute_instance" "vm_instance" {
name = "my-vm-instance"
machine_type = "n1-standard-1"
zone = "us-central1-a"
boot_disk {
initialize_params {
image = "debian-cloud/debian-9"
}
}
network_interface {
network = "default"
access_config {
// Ephemeral IP
}
}
}
Terraform コマンドの実行: コマンドを実行してインフラをデプロイ(ここは GCP だろうが AWS だろうが共通)
terraform init # 初期化
terraform plan # プランの確認
terraform apply # 適用
AWS で Terraform を利用する
プロバイダの設定: Terraform 構成ファイル(通常は main.tf
)で AWS プロバイダを指定
provider "aws" {
region = "us-west-2"
}
ソースの定義: AWS 上のリソースを Terraform を使って定義
resource "aws_instance" "example" {
ami = "ami-xxxxx0000xxxxx"
instance_type = "t2.micro"
tags = {
Name = "example-instance"
}
}
Terraform コマンドの実行: コマンドを実行してインフラをデプロイ(ここは GCP だろうが AWS だろうが共通)
terraform init # 初期化
terraform plan # プランの確認
terraform apply # 適用
ちなみに、IaC と CI/CD の違い
IaC と CI/CD (Continuous Integration/Continuous Deployment)を自身、混同しがちなので以下、まとめます。
項目 | IaC | CI/CD |
---|---|---|
定義 | インフラストラクチャをコードで定義し、自動化する手法 | ソフトウェア開発プロセスの自動化を目指す手法 |
目的 | インフラの構築、管理、更新を一貫性を持って効率的に行う | コードの変更を迅速かつ安全に本番環境にデプロイする |
代表的なツール | Terraform, Cloud Deployment Manager, CloudFormation | Jenkins, GitLab CI, CircleCI, Spinnaker |
特徴 | 宣言型アプローチ、コード管理、自動化、スケーラビリティ | ビルドとテストの自動化、継続的デプロイ、デプロイの安全性、迅速なフィードバック |
まとめ
Cloud Deployment Manager、AWS CloudFormation、Terraform は、それぞれ異なる特徴と利点を持つ IaC ツールです。Cloud Deployment Manager は GCP 環境に特化しており、簡単に利用できる利点があります。AWS CloudFormation は AWS 環境に最適化されており、広範なリソースサポートを提供します。Terraform はマルチクラウド対応であり、複雑なインフラ構成を管理するのに適しています。
これらのツールを活用することで、インフラストラクチャの構築、管理、更新を効率的に行うことができ、運用コストを削減し、スケーラビリティを向上させることができます。IaC の導入を検討する際には、各ツールの特徴と自社の要件を踏まえて適切な選択を行いましょう。